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高まる二次予防の重要性:
アジアにおける心疾患医療の現状・課題

第4回 心血管疾患がアジア太平洋地域にもたらす課題(3)
二次予防がもたらすメリット

エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)の『高まる二次予防の重要性:アジアにおける心血管疾患医療の現状・課題』がこのほど公表されました。アムジェンの協賛を受けて制作された本報告書は『The Cost of Silence: Cardiovascular Disease in Asia 』(2018)に続くシリーズ第2弾です。アジアの専門家15名に詳細な聞き取り調査を実施し、心血管疾患(cardiovascular disease = CVD)の二次予防に関するスコアカードを作成。CVDの二次予防がアジア太平洋地域内8カ国(日本・オーストラリア・中国・香港・シンガポール・韓国・台湾・タイ)の医療体制にもたらす負担と、政策的対応について分析評価を行いました。今回は、10回シリーズの第4回目として、「心血管疾患がアジア太平洋地域にもたらす課題(3)二次予防がもたらすメリット」について、ご紹介します。

二次予防がもたらすメリット

「脳卒中・心筋梗塞の再発リスクがもたらす社会的・経済コストは極めて大きい。そのため韓国の医療現場では、二次予防の重要性がますます注目されています」と語るのは、盆唐ソウル大学校病院 リハビリ医療部の准教授 Won-Seok Kim氏です。こうした流れは、近年アジア全体で見られるようになっています。

CVDを発症したとしても、必ず容体が悪化するとは限りません―それは、再発経験者の場合も同じです。Yeo氏によると、「再発を防ぐためにリスク因子の管理に重点をおく」ことで避けられるといいます。Heart Support Australiaのプログラム統括責任者 兼 シニア・クリニカルサイエンティストShoukat Khan氏もこの見方に同意し、オーストラリアでも「二次予防の重要性に対する認識が広まっており、国レベルでの対応が求められている」と指摘します。Lee氏によると、こうした流れは医療の現場でも加速しており「緊急医療の場でも、患者の救命だけでなく、寿命を延ばすという二次予防の考え方が取り入れられている」といいます。

しかし、CVDに対する二次予防の実践は決して容易ではありません。いくつかの単純な取り組みというよりは、相互連携を伴う幅広い取り組み―効果的な医療の仕組みと政策的支援、そして患者さんの長期的負担の最小化に向けた医療的・社会的介入(intervention)―を積み重ねることが重要です。

Yeo氏によると、二次予防には「一次予防と重複する部分が多い」と言います。「例えば、BMI標準値の維持・運動不足解消・禁煙・バランスのとれた食事などは、どちらの領域でも重視されます」。オーストラリア保健省予防医療戦略専門家委員会の議長Lisa Studdert氏は、「今後、慢性病患者の間では、健康的な食習慣やエクササイズへの関心がさらに高まるであろう。こうした取り組みはCVD患者向け一次予防の基礎となっており、二次予防の分野でも大きく変わらない」と指摘します。

ただし二次予防では、薬物治療を始めとする集中治療など一次予防よりもさらに踏み込んだ介入が求められる、と語るのは慶応義塾大学 医学部 衛生学公衆衛生学の岡村智教 教授です。シドニー大学医学部教授 兼 応用研究センター ディレクターのClara Chow氏も、「一次予防・二次予防の対象となる患者はリスクレベルの面で異なります。心筋梗塞のリスクが10%か2%かでは、どれだけ集中治療を行うかに差が生じるからです」と指摘します。アスピリン投薬・抗血小板療法などを対象としたリスク便益分析の結果を見ると、高リスク患者では特に効果が高くなっています。同氏によると、この傾向は高血圧・高コレステロール血症治療薬など「多くの予防的治療に当てはまる」と言います。「こうした薬物治療を行い、より厳格に目標を管理するというアプローチが効果的であることは明らかです」。運動による心臓リハビリテーションも再発リスク軽減に有効です。Yeo氏は、一次予防と二次予防の最大の違いは、患者さんが退院しても治療は終了せず、人生を通じて継続的に行われる点にあると考えています。

CVDの二次予防には幅広い選択肢が存在します。20以上の研究を対象としたある文献レビューによると、費用対効果の高い、あるいは費用削減効果の認められる介入が少なくとも各疾患に1つ(場合によっては複数)存在します。メディアを介した医療教育、禁煙、薬物治療(アスピリン・スタチン・β遮断薬・ACE阻害薬などを含む)、CVD患者向けインフルエンザ・ワクチン接種などはその一例です1。このレビューは高所得国ではさらに多くの選択肢が存在するはずです。

しかし、多くの国ではこうした選択肢を十分に活用できていないのが実状です。例えば、世界各国の心臓リハビリテーション施設を対象とした調査によると、患者ニーズに見合った数の施設が十分にある国は調査対象の中には存在しません。特にタイは、患者200名に対して1施設と今回の調査対象国の中で最低水準にあり、リハビリ体制の不備が目立ちます2

REFERENCE:

  1. Leopold Aminde et al., “Primary and secondary prevention interventions for cardiovascular disease in low-income and middle-income countries: a systematic review of economic evaluations,” Cost Effectiveness and Resource Allocation, 2018.
  2. Karam Turk-Adawi, “Cardiac Rehabilitation Availability and Density around the Globe,” E Clinical Medicine, 2019.

エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)の『高まる二次予防の重要性:アジアにおける心血管疾患医療の現状・課題』の全編はこちらからご覧ください。