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INTERVIEW
アムジェン株式会社 執行役員 研究開発本部長 三好 出

アムジェンの創薬アプローチ、日本における製品開発
~ バイオロジーの可能性を最大化し、患者さんのために、今できるすべてを ~

4月1日、アステラス・アムジェン・バイオファーマは、米アムジェンが同社のすべての株式を取得し、日本における完全子会社「アムジェン株式会社」として生まれ変わった。日本の研究開発責任者 三好 出 執行役員研究開発本部長にアムジェンの創薬アプローチと、日本における製品開発について聞いた。

――アムジェンの研究開発の特色について、どのように捉えていますか。

組み替えDNAの技術が実用化されはじめた黎明期、1980年に創業したアムジェンは、今日に至るまでバイオテクロジーのリーディングカンパニーとして活動を進めてきました。バイオテクノロジー業界の歴史はわずか40年ですが、これまでに延べ3億5,000万人以上の患者さんがバイオ医薬品の恩恵を受けています。また、過去10年間で300を超えるバイオ医薬品が承認され、今日開発中の医薬品の3分の1がバイオ医薬品と言われています。現在最終段階にある医薬品は150以上、開発中の医薬品も含めると900ものバイオ医薬品が臨床試験中です。

日本において、アムジェンは2013年にアステラス製薬との合弁会社アステラス・アムジェン・バイオファーマを設立し、これまで循環器疾患領域のレパーサ®、血液がん領域のビーリンサイト®、骨疾患領域のイベニティ®の3製品が、日本で上市されています。これまでの7年間で、日本の開発チームはその研究開発能力を急速に拡大し、アムジェンの開発パイプラインのほぼすべてを日本において第一相臨床試験の段階からアムジェングローバルの一員として同時開発、同時申請をする体制が整備されてきています。

アムジェンは、遺伝学、遺伝学に基づいたバイオロジー、そしてそのバイオロジーに基づいた分子工学的にさまざまなモダリティの創薬を進めていくことに特色を持つ企業です。ヒトの遺伝子はおよそ2万個あると言われています。例えば、心血管系に影響するPCSK9、炎症領域のIL33、骨領域のRANKL・スクレロチン。こうしたものを開発に組み入れ、どの遺伝子が良い薬剤標的をコードしているか、疾患のメカニズムに対する深い考察のもとに創薬、臨床開発を行っています。

2013年、ヒト遺伝子解析のリーダーの一社であるデコード・ジェネティック社を買収したのも、その取り組みを加速させることが目的です。同社は次世代DNAシーケンシングのみならず、遺伝子変異、その表現型の両方を素早く、大量に分析する能力を持つことで、薬剤標的の特定と検証を早いスピードで進めていくことが可能です。

――現在の医薬品開発の状況、トレンドをどのように見ていますか。

我々は今、医薬品をデザインするイノベーションの第4の波の中にいると考えています。第1の波は、1900年代初頭、体内での作用は不明ながら有用であったアスピリンの出現までさかのぼります。ここが現代の医薬品業界のルーツですが、ここから創薬のプロセスに確信が生じるのに70年がかかっています。第2の波は1970年代のひとつのターゲットに対して一つの薬剤が対応する理論的な薬剤設計。それに引き続いての第3の波は1980年代、遺伝子組み換え技術を使ったリコンビナントタンパク質によるバイオテクノロジー革命です。アムジェンもその中から生まれた会社です。そして第4の波は多重特異性薬剤、治療のために物質と物質を近づけることでその効力を発揮する生物学的活性を統合した多重標的化合物や生物製剤の時代です。例えばビーリンサイト®は、アムジェン「BiTE®技術プラットフォーム」から生まれた二重特異性抗体によるがん免疫療法剤です。ビーリンサイトはT細胞の細胞膜上に発現するT細胞受容体複合体のCD3及びB細胞の細胞膜上に発現するCD19の両者に結合する一本鎖抗体であり、患者の細胞傷害性T細胞とCD19陽性悪性B細胞を一過性に架橋し、その結果T細胞を活性化することで標的B細胞を傷害します。

多重特異性薬剤は作用薬の性質によって、標的の破壊、活性化、不活化、再局在化などさまざまな変化をもたらすことができると考えています。リサーチではさまざまな試みが行われており、今までアクセスできなかったターゲットに対する創薬を目指して研究を進めています。

――特に重視する疾患領域はありますか。

アムジェンは循環器疾患、がん、骨疾患、神経疾患、腎疾患、炎症性疾患の6つの疾患領域に重点を置いており、これまでに開発した製品の70%以上がファースト・イン・クラスの製品です。

6つの領域の中でも日本における死因の第一位であるがんの領域は今、バイオテクノロジーの最前線、薬剤開発の最前線と言えます。免疫チェックポイント阻害薬は、イノベーションとして高く評価されていますが、がん患者さんの13%ほどにしかベネフィットが行き渡らないと言われています1

我々はさまざまなモダリティを用いて、疾患にアプローチしていきます。アムジェンオンコロジーは40年間でがん領域においてさまざまな「ファースト」を達成しており、5つのファースト・イン・クラスの製品は、がん・血液領域で再発・難治がんに対する画期的な治療を提供しています。米国では今、がん患者さんの5人に1人がアムジェンの医薬品を使用しています。

――日本における開発状況についての見通しを教えてください。

もちろん日本においても、より多くの患者さんに貢献できるよう、我々の挑戦が続いています。既に複数の開発品について世界同時開発、同時申請を目指して日本のチームがグローバルの一員として活動しております。また、アムジェンは世界各国で臨床情報と紐づいた遺伝子データベースの活用を進めており、日本においても国立がん研究センターをはじめ各施設とのパートナーシップのもと、その活用を検討していきます。

最後に、世界中で新型コロナウィルス感染症の感染拡大との闘いが続く中で、日本の医療現場の最前線で活動されている医療従事者の皆さまに感謝と敬意の意を表します。このような状況下において、製薬企業の責務は医療従事者の皆さまが患者さんのリスク・ベネフィットのバランスを最大化することに貢献することであり、研究開発においても、医療現場のニーズに即した形で継続してまいります。

REFERENCE:

  1. Percentage of U.S. Cancer Patients that Derive Benefit from Checkpoint Inhibitor Drugs in 2018.JAMA Network Open.2019;2(5):e192535

略歴:
三好 出 アムジェン株式会社 執行役員 研究開発本部長
10年にわたり製薬企業においてメディカル部門、臨床開発部門、マーケティング部門の要職を歴任し、2018年3月にAABPに入社、研究開発本部長に就任。医師、医学博士、精神保健指定医。広島大学医学部卒業後、広島大学病院、国立呉病院・中国がんセンター、医薬品医療機器総合機構、国立精神神経センターにて精神科及び緩和医療の臨床、基礎研究、臨床研究に従事した経験を持つ。広島大学医学部および大学院 医学博士号(MD) 博士号(PhD)