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高まる二次予防の重要性:アジアにおける心疾患医療の現状・課題
第10回 総括 取り組むべき優先課題

エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)の『高まる二次予防の重要性:アジアにおける心血管疾患医療の現状・課題』が9月に公表されてから、これまでその内容について10回にわたって紹介してきました。最終回となる第10回では、これまでの調査結果、インタビュー内容を総括し、対象国と地域が共通の課題として取り組むべき優先課題について紹介します。

本調査の対象の8つの国と地域において心血管疾患(CVD)が全死因に占める割合は22〜42%*1と程度に差はあるものの、どの国においてもCVDが死因の1位もしくは2位である点に変わりはありません。一次予防の領域ではCVDに対する課題への対応が進んでおり、年齢調整罹患率の減少傾向も見受けられました。しかし高齢化はさらに加速しており、心筋梗塞・脳卒中の再発率も極めて高い状態が続いています。CVDがもたらす医療的・経済的・人的負担の問題へ早急に対応策を打ち出す必要性はむしろ高まっています。ここまで本報告書では、アジア諸国を対象とした心疾患スコアカードと専門家への取材を通じ、CVDの二次予防に求められる政策対応について検討してきました。

その主要な論点は次の通りです。

  • 全ての対象国・地域では、何らかのCVD対策を打ち出しているが、二次予防・政策実行・評価の仕組みづくりといった面で改善の余地がある。
  • 全ての対象国・地域では、改善可能なリスク因子に関する政策が掲げられているが、法制化もしくは具体的なプログラムにまで落とし込まれている事例は少ない。また評価の仕組みも確立していない。
  • 国民全体への啓発活動は限定的で、実施されている場合であっても、十分に効果検証されていない。
  • CVDの二次予防、心筋梗塞・脳卒中を対象とした診療ガイドラインの整備などのアプローチは、国によって大きく異なる。
  • 治療の質に対する評価の仕組みが存在するのはオーストラリアと韓国の2カ国で、二次予防への効果は限定的である。
  • プライマリケアは包括医療に不可欠だが、アジア諸国では依然として発展途上にあり、利用率も伸び悩んでいる。
  • 心臓リハビリテーションは多くの対象国で行われているが、提供体制は限られており、患者の利用率は低迷している。

国レベルの戦略は、各国政府が固有の事情・優先課題を考慮に入れながら策定する必要があります。しかし、今回の調査で明らかとなった下記のような課題は、どの国と地域においても対策が必要だと考えられます。

多職種連携を通じた患者中心の包括医療:
医療データや電子カルテの活用、個別化医療の推進は、包括医療を進めるための第一歩となると考えられます。プライマリケアと専門ケアの連携強化も重要なステップです

患者エンパワーメントの推進:
リハビリ・プログラムの利用率と服薬継続率の低さは、CVDの二次予防を進めるうえで最大の課題です。またエビデンスに基づく患者教育、患者エンパワーメントに向けた取り組み強化も重要課題となります。

データ活用と成果評価の仕組み:
患者レジストリの改善・拡充は、政策の効果を正しく検証するために欠かせません。電子カルテの活用を通じた医療データの統合は、その第一歩となります。非感染性疾患・心疾患プログラムにおける二次予防の成果検証と、品質水準・患者アウトカムに基づくサービス体制の評価も、ケア体制の充実と患者ニーズへの対応に向けた有効策となるはずです。

エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)の『高まる二次予防の重要性:アジアにおける心血管疾患医療の現状・課題』の全編はこちらからご覧ください。

REFERENCES:

  1. Global Burden of Disease data do not include Hong Kong. Information used in this analysis are from the heart disease and stroke pages of the “HealthyHK - Public Health Information and Statistics of Hong Kong” website of the Hong Kong government.